(貧困削減 その5) マイクロファイナンス批判 小額預金(Micro-savings)編

さて、前回の記事では小額保険(Micro-Insurance)を前々回の記事では小額融資(Micro-Credit)を批判してみました。


皆さん、マイクロファイナンス(保険も融資もその他の金融サービスも含む概念)に対して懐疑的になってきましたでしょうか?笑


それでは、今日は、Micro-savings(小額預金)を批判してみようと思います。


(*自分がやってることをなんでこんな批判するんだって?それはまあ後日書きます。笑)

ーーーーーーーーーーーーー


さて、実は、先日書いた小額融資=マイクロクレジット批判はそんなに珍しいものではなく、多くの専門家が指摘してきた事です。

例えば、実際にインドのアンドラプラデシュ州では無理な貸し付けと違法な借金取立によって自殺者が相次ぎ、社会問題となりました。

参考:http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2010/12/post-1848.php






なので、小額融資が批判され始め、その他の小額金融サービス(=マイクロファイナンス)にも注目が集まった、というのは先日書いた通りです。





さて、そこで注目が集まっているのが、小額預金=Micro-savingsです。


例えば、途上国の山奥や農村に行くと、住民は安全に預金できる場所がなく、枕の下やタンスにお金をしまっている。だから、盗難にあうリスクも高いし、自然災害の時になくなってしまうかもしれない。だから彼等は預金できる場所を探している(=預金という金融サービスへのニーズがある)ということです。

更に、預金、貯金があれば、万が一のとき(自己や病気、急な出費)に対応できる為、ショックに強くなる。


こういう考え方のもと、小額預金(Micro-savings)を推奨しよう、という流れがあります。


(参考:http://www.cgap.org/publications/latest-findings-randomized-evaluations-microfinance)

*様々な学術調査で、小額融資(Micro-credit)の効果は疑問視され始めていて、小額預金(Micro-savings)の方が貧困削減に効果がある、ということが言われ始めています。



ーーーーーーーーーーーーーーー


さて、では、預金に対する「Needs」は本当にあるんでしょうか?少額預金は本当に彼等の「ニーズ」なんでしょうか?


また、貯蓄(貯金)を推奨することは彼等の為になるんでしょうか?

                                                                        • -

たとえば、中南米とかに住んでいた方は分かるかもしれませんが、彼等は驚く程貯金をしません。その月にもらった給料はその月のうちに使い果たす。それでまた翌月一生懸命はたらく。

日本人からすると「将来のことが心配にならないのかな、なんて刹那的な奴らなんだ」と思うかもしれません。

もちろん、将来の事を心配しない国民性、というのもあるのかもしれませんが、それには他にも理由があると思います。





それは、自国の通貨や金融システムを信頼していない、ということです。



僕が前いたニカラグアでは、人々は過去数年の間にインフレや銀行口座の差押を経験し、貯金しておいたお金がパーになってしまう、ということを幾度か経験しています。


アルゼンチンでは1988年に年率5000%のハイパーインフレや、2001年に預金封鎖等が起き、人々は自国の通貨を持つ事を敬遠しています。







このような状況では、人々はなんと思うでしょう?



「どうせ貯金してもまたハイパーインフレおきて貯金パーになっちゃうし、もしかしたらまた政府が預金引き出し制限かけるかもしれないし、だったら今パーッと使って楽しんだ方が良いじゃん!!!」



と思わないでしょうか?? 僕だったら思うかもしれません。(もちろん、海外の口座にお金を送る、とか、他にも手段は考えられますが、それもできない人も沢山います。)






でもそれは、「刹那的」で「将来の事を考えない」、「良くない」価値観なんでしょうか?







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最近、国際協力の世界では、貯蓄の大切さを教える、みたいなプロジェクトが多くあります。


貧しい農家の人々とかに、貯蓄をすることが如何に大切かを教えるんです。

僕が今やっているプロジェクトもそうです。フィリピンの農民の方々に、貯蓄を推奨している。




でも、当たり前ですが、僕のやっているプロジェクトは、一国のマクロ経済の安定にまで口出しすることはできません。



ーーーーーーーーーーーーーー


たとえば、僕が彼等に貯蓄を推奨して、彼等が僕の言う事を信じて沢山貯金したとしましょう。

そして、プロジェクトが終了し、僕が去った後、ハイパーインフレや口座の差し押さえが起きたとしましょう。


そしたら彼等はなんと思うでしょうか?


あの変な日本人が来て、「貯蓄すると良い事があるよ!」と言って、僕らはその言葉を信じて一生懸命貯金したけど、ハイパーインフレ起きたから貯金がパーだよ。政府に口座差し押さえられたからもうその貯金引き出せないよ。

あんな日本人の言う事、信じるんじゃなかった。貯蓄なんかせずに、パーッと使ってあの瞬間を楽しめば良かった。




そう思わないでしょうか?





そうなったら、貯蓄を推奨した僕は、どうやって責任とるんでしょう? もう僕はそこにはいません。プロジェクトも終わっています。責任なんかとれません。



                                                                    • -


僕らは皆、何かしらの前提を持って日々行動し、生きています。


日本人であれば、「お金を銀行に預けとけばそれがなくなることはないし、1年後もその価値が激減している事はないだろう」という暗黙の前提です。

多くの人は、これを疑う事はしません。

そして、それを疑い続ける事が良い事だとも思いません。いつ隕石が自分に当たるかを毎日心配しているのが無意味であるのと同じ様に。







でも、その暗黙の前提を皆が共有しているとは限りません。


いや、その前提を共有できている人なんて、ほんの一握りの人だけでしょう。







だから、自分の前提=相手の前提、だと思い込んで、もしくは決めつけて何かを進めると、まずい事がおき得る、ということです。


「お金を銀行に預けておけば大丈夫」「お金の価値は大きくは変わらない」という前提のもと、途上国の様に全く環境が違う場所でプロジェクトを進めて、大丈夫なんでしょうか?






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と、いうことで、こんなマニアックな話が好きな人、今度、またマイクロファイナンスに関するワークショップをしますので、ご興味があれば、是非いらしてください☆



******(以下転送歓迎)*******


University Meets PlaNet Finance

マイクロファイナンス体験ワークショップ〜ブランチマネージャーの1日から見るマイクロファイナンスリスクヘッジ



【日時】2016年3月27日(日) 14時00分〜16時30分(13時30分開場)
*終了後、希望者の方のみ懇親会を予定

【場所】千代田プラットフォームスクウェア 本館 会議室402:http://www.yamori.jp/access/

【参加費】1000円

【定員30名】 先着順

【主催】特定非営利活動法人プラネットファイナンスジャパン
http://www.planetfinance.or.jp/



【プログラム】
1. プラネットファイナンスジャパン概要説明
2. マイクロファイナンスについての基礎講義
3. ブランチマネージャーの1日(書式紹介)
  a. 融資申請書類
  b. キャッシュフロー分析
  c. ローンユーティライゼーションチェック(融資使途確認)

4. キャッシュフロー分析(ペアワーク)
5. 質疑応答、ディスカッション



【参加申し込み方法】
参加をご希望の方はこちらからフォームをご記入ください
https://microfinance.doorkeeper.jp/events/40385


皆様のご参加をお待ちしております!!