車の窓から見る世界

中南米は、一般的に、格差が大きいことで知られています。(もちろん単純な一般化はできないけれど。)


さて、なんで格差が大きいのか、それにはいろーーーーーんな理由があると思うので、全部は分析できませんが、ちょっと最近思った一つの理由を書いてみます。




マナグア(僕が今住んでる国、ニカラグアの首都)は、1972年の大地震で街が崩壊して、その後、皆が無計画にあちこちに住宅街やショッピングモール、公官庁を立てた為、中心部、みたいな所が存在しません。重要な建物が街の至る所に点在しています。歩けない距離のところに。

なので、どこに行くにも必ずと言ってよいほど車が必要です。


お金を持っている人は自家用車で、そうでない人はバスやタクシーを使って移動します。






マナグアにはいわゆるスラム街が結構あるし、ストリートチルドレンも沢山います。


けどそれらの風景は、車に乗っている人にとっては、「車の窓から見る景色」でしかありません。

スクリーンを通じてみる、映画みたいなもんです。

自家用車に乗っている裕福な人々は、豪華な家で休日を過ごし、乗り心地の良い車に乗って会社に行き、ピカピカなオフィスで仕事をして、物価が普通の食堂の10倍くらいするレストランやカフェでアフターファイブを過ごします。点と点を車で結ぶ生活です。彼等の行動範囲である点と線は、どこも先進国並みの生活環境です。


彼等にとっては、自分の国の「貧困」も、僕たち日本人がテレビや雑誌で見る「貧困」くらいの実感しかないのかもしれません。


「貧困」を見る時は、車の窓という「スクリーン」を通じて見る時だけだから。





経済学的に、格差が大きい理由は色々説明できます。

でも、マナグアみたいに、都市設計(中心部がなくて、人々の移動の多くが車)が人の心理にも影響を及ぼして、それが結果的に、経済的状況にも影響を及ぼすんじゃないだろうか、なんて最近思ってます。



世の中は、ほんとーーーーーに、色々な要因が複雑に絡み合って、色々なものに影響を及ぼしながら動いてるんだなーなんて思います。

だから、それを考えるのは大事だと思うし、なによりも面白いです。





(格差が「悪い」のか、貧困が「悪い」のか、自分の国の貧困を見て見ぬ振りをしている裕福な人達は「悪い」のか、そういう価値判断は、これとは全く別の話だと思います。そういう価値判断をここでするつもりはないし、そもそも僕みたいに先進国から来て、政府からお金をもらって悪くない環境で働いてる人間がどうこう言うのはおこがましいと思います。少なくとも今の所は。)