ニカラグア レポート ③ 貧困削減 (長文)

ちょっと今の僕のお仕事について話します。
(自分の記録も兼ねて書くのでちょっと長くなりますので、興味ある方だけ!)


僕が働いているのは、ニカラグアの首都、マナグアで多分一番大きな大学、中米大学の敷地内の独立組織である、NitlapanというNGOです。

Nitlapan ; http://www.nitlapan.org.ni/site/es/スペイン語

ミッションは、ずばり、貧困削減、です。

常勤の職員が130名、とNGOとしては非常に大きなNGOに思えます。
また、組織体制もしっかりしていて、経営幹部と4つの部署、各地方事務所からなっています。


4つの部署とは、研究調査、ビジネスインキュベーション、企業支援、法整備支援です。



研究調査部門は、主に貧困地域へのアンケート、インタビュー調査を通じて、現在の状況の把握に努めます。ヨーロッパの大学の開発経済学の教授や、博士課程の学生、常勤のスタッフなどが情報収集、研究活動を行っています。

ビジネスインキュベーション部門は、貧困地域での小規模農家や企業への小額融資によってその地域の経済活性化、生活水準向上を目指す部門です。いわゆる、マイクロファイナンス機関とやっていることが近いと思います。

起業支援部門は、起業へのコンサルティングや技術支援を行います。

法整備支援部門は、ビジネスインキュベーション部門と起業支援部門の法務を担当します。




僕は今、主にビジネスインキュベーション部門で活動しています。




ニカラグアは、今、中南米で最貧国と言えど、経済成長しています。

世銀のデータ: http://www.worldbank.org/en/country/nicaragua (英語)


経済成長率は年率5%くらいなので、結構だと思います。まあどこまでデータが正しいかは微妙だけど。。。



なので、ビジネスインキュベーション部門に対する融資してほしい、という要望は結構たくさんあるみたいです。
融資先は年々増加している、ということ。


案件をどうやって発掘しているか、というと、地方オフィスで、現地の状況に詳しい、また、現地に人脈もある人を雇って、その人経由で融資先=顧客を探す、ということです。




さて、実際の活動はというと以下のような感じです。


まず一日目は融資先を車で回って、事業の調子はどうか、とか、なんか問題はないか、とかを聞いたり、こうやったらもっと上手く行くんじゃないか、という用なアドバイスをしてきました。


例えば。


一件目。

大きな道を車でぶっ飛ばしていると、横に砂利道の用なものが現れ、そこから、草原というか茂みの中に、がたがたの道が続いています。大きな水たまりもあります。そんな中をがたがたと車で10分程いくと、一つの集落が現れました。
完全に外界から隔離されています。大通りからがたがたの道を歩いて20分程かかると思うので、それだけでも大変な労力です。

バラック小屋みたいなのが点々としていて、豚や鶏、牛や馬などの家畜が放し飼いにされています。


融資先はこの集落に唯一あるコンビニみたいなお店(スペイン語ではpulper〓a)、なんでも売っている店ですね。


ここに融資し、このお店を開店したことで、この集落の人々の暮らしは大分良くなった、ということです。

中に入ると、そこは、土間の用な場所に服とか、食料とか、おもちゃ、飲み物が雑多に床に並べられている様な感じです。
犬とか鶏も一緒に床に寝そべってます。笑

また、店主のおばちゃんは、娘が病気で入院している為、つきっきりで最近戻ってきていない、ということ。



代わりに息子がお店番をしていました。

さてさて、どんなアドバイスをしたかというと、本当に基本的なことです。


支出と収入の記録をしていない用だったので、ノートに、支出と収入をこうやってちゃんと書こうね、とアドバイスしてノートを渡したり、食べ物は床に置くと汚いのでテーブルに載せるなり何なりしようね、とか、そういうことです。

こういう家族経営のお店では、一家の誰かが病気になることで一気に経営が傾くリスクがある、ということです。




さて、2件目。

大通りに戻ってしばらく行くと、今度は街の様なものが現れます。ここは比較的規模の大きな街です。外界から隔離されてもいません。

融資先はここのトルティーヤ屋さん。トルティーヤは、まあ、日本で言うと、マックラップのラップみたいなものでしょうか。笑

お店に入ると、ここも土間。鶏が歩いてました。


ここでも、ちゃんと売り上げと仕入れの記録をつけようね、とか、そういうことをアドバイスしてきました。
また、大体一日の売り上げはどれくらいか、商品のラインアップはどうなっているか、どの商品が売れてどの商品が売れてないか、みたいな事を聞き取ります。



3件目はパン工房。

前のトルティーヤ屋さんと同じ街にある店です。工房は家族経営でパン焼き竃のある本当に蒸し暑い部屋で皆汗水たらして働いていました。

ここも衛生状態が良いとは言えません。出来上がったパンは床に置いてあるし、パン粉をこねる機会みたいなのの上には、ラジカセとか携帯電話が置かれています。
ここでも、ちゃんと帳簿を付けよう、とか、商品はきれいにしておこう、とかそういうことをアドバイスします。





こんな感じで7件くらいの小さい企業を回りました。




その次の日は、ビジネスプランの策定です、

融資を依頼してくる小規模企業に行ったインタビューを元に、融資をできるかどうかを検討します。

現在の売り上げがどれくらいあって、世帯収入がどれくらいあって、家族構成はどうなっていて、みたいな事を調べて、依頼されている額が妥当なのか、どのようなビジネスプランを考えているから、どれくらいの期間で返済が可能なのか、みたいな事を検討します。



僕が働いているNGOは利益目的ではないので、金利も他の銀行に比べたら安くて、担保とかも取りません。






さてさて、こんな感じですが、まあ、いろんな批判もあると思います。

なんだ、銀行とやってる事同じじゃん、とか
所詮金貸しか、とか
幸せに暮らしている農村の人々をそうやって市場経済に巻き込んで、

とかとか。



ごもっともだと思うので、それはこれからも考え続けていかなければならないです。
幸せ度ランキングで常に上位に位置する国、ニカラグアに、同じランキングであんまり上位に入らない日本とかアメリカとかのやり方を押し付けることが、果たして良い事なんだろうか、みたいなことですね。

これ、本当に大事な問題だと思います。






でも、個人的にはかなり楽しんでいます。知的好奇心刺激される日々です。






融資のお陰で経営が軌道に乗って、そのお店も、そのお店があるコミュニティーも生活主順が向上して、学校に行ける子が多くなった、といってお礼を言ってくれたりする人がいると、


ああ、少なくとも悪い事をしてる訳じゃないのかなー、って思ったり

ニカラグア貧困率も徐々に現象しているデータを見ると、

ああ、悪い事ではないなあ、と思ったり。




また、色々な国の人達と共同するのも面白いです。

フランス人の学者がいたり、ベルギー人の博士課程研究生がいたり、アメリカからのボランティアがいたり。






こんな感じで、毎日めっちゃ勉強になって、知的好奇心刺激されまくりです。





詳しい各々の事に関してはまた書く機会があると思いますが、まあ僕の活動と、今感じてる事の概要はこんな感じです!