ニカラグア レポート ⑤ 国際協力と市場経済と政治 (長文)

さてさて、また、ちょいと活動の報告をしようと思います。色々あって結構面白いんです。

(僕が拙いスペイン語と英語で理解している範囲の事なので、勘違いもあるかもしれませんが、とりあえず今理解している範囲の事です。違っていたら後日訂正します。また、もっと詳しい方いらしたら訂正、コメントください。。。お願いします。)






前も書きましたが、僕が働いてるNGOニカラグアの貧困削減を目的として25年前に創設され、国際機関から資金援助を受けたり、プロジェクト単位で資金を取ってきたりして、結構しっかりしている団体です。働いている人達も皆ヨーロッパでマスターを取っていたり、ドクターを持っていたり、と、凄くハイレベルです。

ほんと、学んでばっかり、という感じですね。





さて、このNGOの資金源ですが、数年前までは国際機関からの援助が6割強で、残りの4割弱を自らの活動(マイクロファイナンスや研修事業、コンサルティング事業)などでまかなっていました。



僕が今いる部署は、マイクロファイナンスを主にやっている事業部で、貧困に苦しむ中小企業、中小農家に対して小額のお金を低金利で貸し出す事で、彼等の事業を支援するものです。もちろん、寄付ではないので、小額の利子とともに、元本を回収します。





さて、最近一つの問題がうちの部署で発生しています。それは、ある地域における資金の回収率が非常に悪くて、赤字になっているんです。

その地域には、貧困が集中していて、小企業に小額ずつお金を貸しているのですが、色々な事情(倒産とか、オーナーの逃亡)によって、貸したお金が返ってこない。


そうすると、人件費とかをうちの部署の事業だけの収益ではまかなえない訳です。



例えば、こないだ一緒にその地域のお客さんを回ったのですが、一つのお客さん(小さなトルティーヤ屋さんや、パン屋さん)に貸し出すお金の平均が300ドルくらい。月の利子が1、5%くらいです。それを12ヶ月に分割して返してもらう。

そういうお客さんを一日6件くらい回って、各々300ドルくらいづつ貸し出して帰ってくる。

そうすると、一件あたりの1月の収入が300×0.015=4.5ドル  それが6件なので、1日で27ドル。


毎日コンスタントに6件貸し出せたすると、月20日働くので、27×20=540ドル


の収入が得られるわけです。


でも、実際には、毎日コンスタントに6件ずつ貸し出せる訳もなく、そのうち、返済できない人も現れるので、月540ドルの収入は当然見込めません。


人件費は、一人の営業マン(僕が付き添った人)の給料が大体月400ドルくらいなので、そこに、色々経費(例えばお客さんを回る際の交通費とか)を足したり行くと、やっぱり支出が収入を上回ってしまう。


(ごめんなさい、かなりはしょって書きましたが何となく規模感は掴めたでしょうか。。。?笑  色々不備、説明不足あると思います笑。前に貸し出した分の利子の収入があるでしょ、とか、翌月も貸し出すから収入はもっと増えていくでしょ、とか。。。笑)







さて、じゃあこの状況を改善したい。どういう方法が考えられるだろう、となるわけです。


そうすると

1:貸出先を増やす
2:貸し倒れする可能性が低い所を選ぶ
3:人件費等のコストを削減する

みたいな方法が考えられる訳です。

3は人をきる、ということにも繋がるので、うちのNGO的には避けたいところでしょう。

で、1や2をやろうとするわけですが、そうすると、必然的に、貸出先を規模の大きな中企業にする、みたいな選択肢が考えられてくる。


貸出先を中企業にすると、まず一件あたりの貸し出し額が違ってきます。例えば、中企業だと、一回で1500ドル貸す、みたい所もでてくる。そうすると、そこを一件訪問しただけで300ドル貸したところを5件訪問するのと同じです。効率がいい。

また、貸出先を中企業にすると、やはり安定しているので、貸し倒れするリスクも少ない。






さてさて、ここからがちょっと面白い。


こうなってくると、うちのNGOの、貧困を削減する、というミッションと齟齬が出てきます。一般的に行って、中企業の人達は「極貧」という程の状態ではない。きちんと家があって、食べるものがあって、子供がたくさんいて、彼等をきちんと教育できている、水準です。(もちろん、裕福ではないので、問題は沢山あると思うし、それを改善しなくて良い、と言っているわけでは全然ない。)

利益を出さないとうちのNGOは立ち行かなくなるわけですが、利益を優先すると、ミッションである、貧困層に貢献する、という目標と齟齬が出てくる。






さてさて、さらに、です。




上にも書いたように、数年前まではうちのNGOは国際機関や先進国政府から援助を受けていました。国際機関や先進国政府が資金援助をするのは当然、ニカラグアの貧困削減に貢献する為であって、うちのNGOが利益を出す為、ではない。なので、うちのNGOは、彼等から資金援助を受ける為に、きちんと貧困層に対する支援を行っていますよ、という証明をする必要があった。

なので、援助してくれる国際機関や先進国政府に対して、貸出先一覧、みたいなのを提出して、きちんと貧困にあえぐ小企業にたいして貸し出しを行っていますよ、という証明をしていた。それで、「あ、ちゃんと貧しい所を支援してるんだね、よしよし」となると、ポン、とお金をもらえていた。


なので、上に説明した様な赤字の状況でもあえて小企業を選んで融資をするインセンティブが働いていた。収入の半分以上を占める国際機関からの資金援助を得る為に。。。







さて、数年前、ニカラグアでは選挙がありました。この選挙で、今の大統領が再選を果たした訳ですが、それには色々国際社会から批判があった。(憲法違反じゃないか、とか、透明性に欠ける、とか)。詳しくははしょります。笑


それで、国際機関や先進国政府からの援助が引き上げていったしまった。(特にヨーロッパ各国からの2国間援助資金)
憲法違反をして大統領が権力を握っている国、不透明な政治を行っている国にはもう援助はしないよ、という事です。






さてさて、そうすると、うちのNGOも大変なことになるわけです。なんせ財源の半分以上を占めていた資金がもう来なくなってしまったんだから。




そしてもうお分かりの様に、資金援助を得る為に赤字覚悟で行っていた小企業への融資のインセンティブもなくなってしまった訳です。
貧困削減をミッションに立ち上げたのに、組織存続の為には少なくとも一定の利益は上げないといけなくて、そうすると、もっとも支援を必要としている再貧困層には手が届かなくなってしまう。







さてどうしましょう!

というのが今の状況ですね。(多分、結構典型的なパターンかと思われます。)




まあ、僕はボランティアだし、このNGOの運営、意思決定、までは当然関われない訳ですが、こういうマクロな動きにも注意を払っていると面白いなあ、と。 
そして、もし将来僕がどっかの機関のなんらかの意思決定者になるようなことがあれば、こんなことに頭を巡らせておく事も無駄にはならないんではないか、と。

そんなことを考えていました。

ここにたいしてどう関わって行くか、に関しては、またおいおい書こうと思います。





*もう一度書きますが、あくまで拙い言語で3ヶ月たらずで把握した事なので、事実の認識齟齬、勘違い、知ったかぶり、があるはずです。。。もしお気づきの方いらっしゃいましたらご指摘ください。。。よろしくお願いします。