実は難しい原因と結果の関係

ずーっと前にアメリカの大学院に行きたいなー、なんて考えて、GREというテストの勉強をしていた時のことです。(もう勉強してません。笑  3日坊主なので。笑)

確かライティングのパートで、Post Hoc Fallacy という、良く陥りがちなロジックの罠に陥らない様にしましょう、というパートがありました。


それはどういうものかと言うと、「Aというコトの後にBというコトがおこった。だからBの原因はAだ!」というものです。これは、普通に考えれば間違いである事がすぐ分かるのですが、意外と陥りがちな罠です。




このGREの本では、これが間違いである例としてこんな例を紹介しています。

「A君とBさんが結婚して10ヶ月後に子供が生まれました。A君とBさんはめでたく子供を授かったのでした、めでたしめでたし!」

これは間違いです。なんで二人が結婚した10ヶ月後に子供が生まれたからといってその子が二人の子供だと分かるのですか?それだけでは証拠にならないでしょ?


というものでした。    笑 笑 笑


真面目なテスト勉強の合間にこういうネタを入れてくるあたり、僕は大好きです。笑


(参考:http://en.wikipedia.org/wiki/Post_hoc_ergo_propter_hoc






さて、こないだ書いた、質的調査と量的調査と正義の記事でも触れたのですが、ある事象の原因を探るのって、実は結構難しいなーと最近思います。



それを最初におもしろいなーとおもったのは、この本を読んだときでした。

Freakonomics

Freakonomics



この本の中で取り上げられている事例は、以下の様なものです。


昔、ニューヨークはめちゃめちゃ危ない都市でした。地下鉄なんて乗ろうもんなら襲ってくださいと言ってる様なもんだったみたいですし、街を夜に出歩くなんてとんでもなかったみたいです。全米で最も治安の悪い都市の一つだった様です。

でも、今はそんな事ありません。僕がアメリカを1年放浪していたとき、ニューヨークに1ヶ月程滞在して、夜な夜なクラブに繰り出して真夜中に地下鉄とタクシーと歩きを組み合わせてハーレムまで帰る、みたいな事はよくありました。(これはこれで今でも推奨されませんが。。。笑)


治安を改善した人として有名なのが、ジュリアーニ市長です。

彼は、上の記事にもあるように、警察機能を強化して犯罪を半減させました。



さて、彼が警察機能を強化した事が本当にニューヨークの犯罪が減った理由なのか、というのがこの本で考察されているテーマです。



警察が増える→犯罪が減る、というのは非常に分かりやすいロジックです。結婚→子供、みたいに。笑


でも、この本では、「警察を増やしたら犯罪が減る、という事例は過去になかった」と言っており、(ずっと前に読んだ本なので間違っていたらごめんなさい笑 大筋はあってると思います。。。)
「他に何か、犯罪が減少した原因があるはずだ」と主張しています。


そして、「犯罪が減少した20年前くらいに中絶が解禁されたこと」が犯罪が減少した本当の原因だった、と言っています。


どういう事かというと、親が中絶をしたかったのにできなくて生まれた子供は、恵まれない経済状況の中で育つ事が多く、成人した時に(20歳くらいの時に)犯罪に走りやすい。だから、中絶を合法化したことによって犯罪に走りやすい人の母数が減った。ということみたいです。

(念の為言っておくと、あくまで統計的に、という話です。中絶をしなくて生まれた子で、恵まれない経済状況の中一生懸命頑張って成功を収めている人なんて沢山います。)





まあもちろん、この要因だけが犯罪の減少に貢献したかは別の話です。ジュリアーニ市長の貢献も多大なものがあったでしょう。当時のアメリカの景気の回復も犯罪の減少に貢献したでしょう。


ただ言いたいのは、原因と結果の関係は見た目よりも意外と複雑で、難しいんだなー、ってことです。






もう一つ例を出すとすると、僕の仕事の経験でしょうか。

僕は、昔、システム部門で働いてほしいのですが、そうすると、新しいシステムを買ってほしい営業の方から、「このシステムを導入したA社はシステム導入後に〜%コストが削減されました」とか「このシステムを導入後、B社は〜%売り上げがアップしました」みたいな話がくる訳です。



きれいなプレゼンテーションで、そういうトークをかまされると、「お、ほんとにスゲーシステムなのかな」みたいに思っちゃいます。


けど、本当にそうなんでしょうか?A社はコストを削減している途中で、それが上手くいっていて、浮いたお金でたまたまそのシステムを買って、その後もコスト削減がうまく続いただけの可能性はないんでしょうか?B社の売り上げがアップしたのはそのシステムのお陰じゃなくて、競合のC社がへまをやらかしたから、という可能性はないんでしょうか。











僕たちは、結構だまされやすい生き物なんだなーって思います。それらしく聞こえる事を、真実だと思い込んでしまう。

また、物事の理由を知らずにいることは不安で気持ちが悪い為、安易に、原因と思われるモノを特定して安心したりする。

人のせいにしたり、環境のせいにしたり、もしくは、不必要に自分を責めたり。でも、本当に原因はそれなんでしょうか?





そうやって考える事は楽しいし、より大きな世界観を持つ事を助けてくれると思います。世界は複雑で、いろんな要素が絡み合っていて、面白いなあ、って。


考えること、疑う強さを持つ事、違う可能性を探る謙虚さを持つ事、は大事だし楽しいし、クリエイティブだなー、なんて思う訳です。



まとめ:
あー、難しい仕事任されちゃった。こんな難しい仕事スペイン語使ってできる訳ないじゃん!やる気しねー。お、ちがった、仕事やる気しないのは仕事が難しいからではなく、昨日飲み過ぎたからだった!原因間違えた!