人は何故ゴキブリを嫌うのか。その2  〜直感は信じられるか〜

さて、こないだの記事には続きがあります。


実は、この話、先日友達としてたんです。そしたら、友達はこういいました。


「いや、人がゴキブリを嫌いなのは社会的な影響じゃなくて、本能的なものだろ。どこの社会でもゴキブリは、嫌なものや好ましくないものの代名詞として使われるじゃん。ルワンダ大虐殺の時も、ゴキブリどもを抹殺しろ、っていううたい文句が使われたし」






これにはひじょーーーーに説得力があると思います。



こないだの記事のコメントにもいくつか頂いた様に、ゴキブリにはいくつもの(人間にとって)好ましくない性質がある様に思います。なので、どこの社会にいってもゴキブリは嫌われるんだから、人間は本能的にゴキブリが嫌いなんだ、社会的影響なんかじゃない!というのは一理も二理もあると思います。






さて。昨日の記事は、「ゴキブリは汚い!」と直感的に思っている、この「直感」はどこから来ているんだろうか、という話でした。日本では、その「直感」は「本能」から来ているものではなくて「社会的影響」によって形成された直感なんじゃないの、という話です。









そう、「直感」には2種類あると思うんです。



次の図を見てください。有名な図なので多くの人が見た事あるんじゃないかとおもいます。

水平線の長さはどちらが長いでしょう?






答えは「どちらも同じ」です。

でも、どうしても上の方が長く見えてしまう。

これは、人間がどうしても逃れられない、生まれつき備わった「直感」です。










では、次の問題はどうでしょう。




「トムは内向きで、勤勉で、細身です。トムは司書である可能性が高いでしょうか、農民である可能性が高いでしょうか」





答えは「農民」です。なぜなら、司書の母数より農民の母数の方が圧倒的に多いからです。



でも、我々は、「内向き」「勤勉」「細身」という特徴を「司書」と結びつけて、「直感的」に「トムは司書の可能性が高い」と答えてしまう傾向にあります。

(同じ様な問題にこんなものもあります。「女性のHIV感染者数で最も多いのは次のうちどれでしょうか。主婦、お手伝いさん、売春婦。答えは、主婦。母数が最も多いから。でも多くの人は「売春婦」と答えてしまう。」)



これは、社会的に培われた「直感」であるような気がします。




「内向き」「勤勉」「細身」という特徴を「司書」と結びつけるのは、教育や環境の影響が大きいでしょう。









自分が直感的に「これだ!」と思ったとき。

それは果たして生まれ持ったものなのか、それとも後天的に培われたものなのか、考えてみると面白いのかもしれません。





これが、ゴキブリから学んだことです。





(この内容も、Daniel Kahneman, Thinking Fast and Slow、からアイデアをもらっています。)

Thinking, Fast and Slow

Thinking, Fast and Slow